病気の話
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押し付けないでほしい医療DX
2月号で取り上げたデジタル教育の弊害が医療においても問題になっています。国が進めている医療DX(デジタルトランスフォーメーション)は1)マイナ保険証2)電子カルテ更に3)電子処方箋など多岐にわたります。当院が反対している1)マイナ保険証については、国は紙の保険証を廃止してマイナ保険証をカードリーダーにかざしてデジタルで受付することを強引に推し進めています。しかし相変わらずマイナ保険証での患者情報の紐づけミス、カードが読み取れないなどのトラブルが続いており、マイナ保険証を使っている医療機関では受付業務が滞っている様子です。昨年12月初めに紙の保険証廃止を国が宣言して保険証が使えなくなると勘違いして急いでマイナ保険証の手続きをした方が多数いました。しかしマイナ保険証の害悪に気付いた方達はマイナ保険証の解除に奔走しています。昨年10月末から12月いっぱいでマイナ保険証を解除したのはなんと4万5千人に達しています。私の90歳代の両親もマイナ保険証の紐づけの解除手続きをしました。しかしマイナ保険証しか持ってない患者さんも出てきており、当院も今後はカードリーダーを設置して使えるようにしていきます。それでも当院は高齢の方の受診が多く、皆マイナ保険証に対して不安・不満を持っているので、今まで通りの紙保険証使用を堅持します。また国は医療機関が統一された2)電子カルテを使って、医療機関同士で患者情報のやり取りをできるような電子カルテシステムの導入を進めています。しかし当院では患者さんとの対話を重視して電子カルテ画面を見ないですむような紙カルテをクリニック開院当初から使っています。私は字を書くことが好きなので患者さんと話しながら今まで通りの紙カルテ記入を続けて、電子カルテにしないつもりです。病院紹介するにしてもカルテをコピーして診療情報を持って行ってもらったり、手早く自分のパソコンに主訴と経過をまとめてプリントしたりメール添付して紹介先に伝えるようにしており、電子カルテの必要性を全く感じません。また電子カルテを使うにしても各医療機関毎に全く別の会社の製品が使われており、政府が考えている日本国内を1つの製品に統一した電子カルテにすることには無理があります。更に電子カルテのセキュリティーの問題ではサイバー攻撃を受けやすい日本の医療機関で電子カルテを統一して全国でカルテ網をつなげるということは危険このうえないことです。また3)電子処方箋については国は本年3月までにほとんどの医療機関(薬局含めて)でシステム導入を目指していましたが、薬局の参加は多いものの実際の電子処方箋発行数は全処方箋のほんの0.15%でした。更に昨年12月半ばにはシステムトラブルで全国の電子処方箋システムを8日間も停止するはめになっています。このシステムトラブルはマイナ保険証における紐づけトラブルと同じ構造であり、今後もトラブル発生が懸念され、当院ではこの電子処方箋システムも導入しないつもりです。このようなシステム導入は大きな病院とその系列のところが国の指導に従って行えば良いだけです。我々一般開業医までトラブル続きの流れに巻き込まないでもらいたいものです。